レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

操の「へぇ~!」な雑学

沙羅樹

「ムッシュ・フルーリの小さなお話のタネ」
ムッシュ・フルーリは植物にとても詳しい白井の知恵袋ともいえる方。知っているだけで道端の草花や公園の並木など見慣れた季節の風景がキラリと輝く、楽しいお話のタネをどうぞ。
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♫ 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす ♬

この一節は、知らない人はいないよねぇ。高校生の古文の授業で暗記させられて、今でも空で口ずさめる人も多いんじゃないの? そう、みんなも良く知っている「平家物語」の冒頭の部分だよね。 じゃあ、この文中にある沙羅双樹っていう木はどんな木か知っているかい? 沙羅双樹っていう言葉は誰しも知っているんだけど、この言葉が何を示しているのか知らない人が結構多いんだよ。 と言うことで、今回は沙羅双樹にまつわる話をするぞ!

 シャーラ(沙羅双樹)
まず、沙羅双樹とは、印度菩提樹、無憂樹とならび仏教三大聖樹(仏教三霊樹)のひとつとされていて、お釈迦様が入滅する際にそばに生えていたとされる木なんだけど、サンスクリット語でシャーラと呼んでいたので、それが仏教伝来と時を同じくして日本に入り、日本語のシャラノキ(沙羅樹)となったようなんだ。ところが、このシャーラはインドの熱帯地域に自生する樹木(フタバガキ科)で、もちろん日本には自生していなくて、中国や日本のような温帯地域では冬の低温で枯れてしまうんだよ。 そこで、その代用として考えられたのが、日本に自生しているシャラノキ(沙羅樹)、すなわちナツツバキなんだ。見かけはちっとも似ているとは思わないんだけど、花色が白くて、花が1日しか保たないこと、それに花首からポトッと落ちることなどから、シャーラをイメージしたらしいんだけどね。
 ナツツバキ(沙羅樹)
 ナツツバキの紅葉

さて、シャラノキことこのナツツバキは、庭木にも良く使うし、全国のお寺にも植えられているから知っている人も多いよね。名前どおり、ツバキ科の落葉高木で6月から7月にかけて白いツバキのような花を咲かせるんだ。日本には、ナツツバキの近縁で葉と花がいくぶん小さいヒメシャラという樹木もあるんだけど、どちらも成熟した木になると樹皮が剝がれて幹肌がツルッツルになって凄く綺麗なんだ。だから、この木をサルスベリって呼んでいる地方もあるらしいよ。
 ナツツバキの樹皮

ついでに、仏教三大聖樹とは、
無憂樹(マメ科):釈迦が生まれた所にあった木
印度菩提樹(クワ科):釈迦が悟りを開いた所にあった木
娑羅樹(フタバガキ科):釈迦が亡くなった所にあった樹木
なんだそうだぞ。
 無憂樹

最後に、お釈迦様が入滅された際に、その四隅に2本ずつのシャーラが生えていたところから、対の木を意味する双樹、すなわち沙羅双樹と呼ばれているらしいぞ。だからシャーラすなわち日本ではナツツバキを指すときには、沙羅樹と書くんだぞ。間違わないようにな!

「恨み」と「秘密」のオトギリソウ

みんなはオトギリソウって言う花を知っているかな? 日本中の山野に自生している植物で、夏になるとスクッと直立した細い茎の先に3㎝ほどの黄色い花をたくさん咲かせるので、庭に植えている人もいるくらいなんだぞ。
 オトギリソウの花

さて、今回はこのオトギリソウって名前の由来を勉強してもらうとするとするかな。ときは平安時代、花山天皇の頃、晴頼という優れた鷹匠が居たんだそうな。晴頼は飼っている鷹が傷つくと、ある薬草を使って傷を直ぐに治してしまっていたんだ。鷹匠の仲間達はその薬草を名前を聞き出そうとしたんだけど、晴頼は頑としてその名を明かすことはなかったんだ。ところが、彼の弟がうっかりとその名前を漏らしてしまったもんだから、さあ大変。晴頼は激怒して即座に弟を斬り殺してしまったんだ。そのできごと以来、秘密の薬草はオトギリソウ、つまり弟切草と呼ばれるようになったんだぞ。しかも、弟を斬ったときに飛び散った血しぶきが、葉や花に転々と黒いシミを残したと言われてるんだ。
 オトギリソウの花の拡大
(弟の血痕とされる黒い点や筋が見える)
 オトギリソウの葉の黒点
 オトギリソウの葉の裏の黒点

どうだい、なかなか怖い話だろう? オトギリソウという名前がこのような言い伝えが由来なので、その花言葉も「恨み」、「秘密」、「敵意」など、あまり好ましいものじゃないんだよな。だから、庭植えするのを忌み嫌う人も居るんだけどね。でも、別名には「鷹の傷薬(タカノキズグスリ)」や「血止め草(チドメグサ)」など、薬草としての効能を意味するものもあるんだぞ。

オトギリソウは文字通り分類学上「オトギリソウ属」に含まれるんだけど、このオトギリソウ属は学名では「Hypericum(ヒペリカム)」と呼ばれていて、欧米ではこの名前で呼ばれる園芸植物が数多くあるんだ。日本にも古くからあるビヨウヤナギやキンシバイなどがそうで、最近では、花じゃなくて果実を観賞するヒペリカムの園芸品種も切枝として花屋さんの店先を賑わせてるよね。
ガーデンや花屋さんでヒペリカムを見つけたら、オトギリソウの名前の由来となった、遠い昔の言い伝えを思い起こしてみるのもイイかもね。
 ギンシバイの花
 ビヨウヤナギの花
 観賞用ヒペリカムの果実

多肉植物とサボテン

最近、多肉植物やサボテンが、特に若い人たちの間で流行っているらしいね。えっ、そんなの知らないって? おいおい、ちゃんとアンテナを張り巡らせて、世の中の動きぐらいは知っとかなくちゃ、年寄り呼ばわりされちまうぞ!
 ハオルシア
 リトープス
ところで、流行っている理由っていうのが、普通の植物に比べて形が変わってて、可愛くてインテリア小物として使えて、しかも乾燥に非常に強いので、水やりをちょっとくらい忘れても、びくともしないところなんだって。流行るのは嬉しいけど、手入れしなくていいからっていうのは、ちょっと感心できないなぁ。生き物として扱っていないってところが、どうなんだろうって思っちゃうよ。
まあ、ぼやきはそれくらいにして、本題に戻ろうか。よく、これはサボテンですか、それとも多肉植物ですか?って訊かれることがあるんだけど、みんなも訊いたことがあるんじゃないの?
まずは、正解を話しておこうか。多肉植物というのは、葉や茎、根に水分を貯蔵して肥大した組織を持った植物の総称で、同じ様な能力を持ってるけど、植物学的には何の血縁関係もないもの同士が集まったグループなんだ。とうことは・・・・・、そう、よく気がついたね、サボテンも茎に水分をためて肥大しているので、多肉植物に含められるんだね。 多肉植物の中でも、サボテンは非常に種類が多く、しかも植物学的にもサボテン科に分類されている大きなグループだから、多肉植物から独立して呼ばれているだけなんだね。
  アエオニウム
 オオベンケイソウ
 キダチアロエ
 マツバギク
サボテンは、サボテン科に分類されるグループで、南北アメリカ大陸に千数百種も自生しており、その形や生態、生活環境も様々なんだ。みんなはサボテンは水が要らないって思っていないかい? 実はサボテンは乾燥には非常に強いけれど、生長期には十分な水が必要なんだ。本当は水が大好きで、水栽培もできるくらい何だぞ。乾燥にめっぽう強いことから、ずいぶん誤解されているんだよ。
 金鯱(サボテン)
 鶯鳳玉(サボテン)
サボテン以外の多肉植物も、乾燥には強いけど、生長する時期には水や肥料が必要だから、年中、水もやらずに放ったらかしにしないでくれよな。もちろん太陽光も好きだから、年中家の中に置いてちゃ弱ってしまうぞ!サボテンもそれ以外の多肉植物も、あくまでも生き物だってことを忘れないように!!

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