レシピ&エッセイの白井操クッキングスタジオ

料理研究家・白井操の神戸発レシピやエッセイがたっぷり!料理講習会のイベントや主な著書なども掲載中。男の料理や食育、シルバーカレッジ情報も発信中。

西宮阪急「食のミニセミナー」

2017.12.8 京都錦 かね松老舗 店主 上田耕司さん

2017/12/13 New

今年最後のセミナーは、西宮阪急の野菜売り場でおなじみの「京都錦 かね松老舗」三代目店主の上田耕司さん。京都の台所、錦市場で明治15年創業の老舗です。京野菜ブームの火付け役でもある上田さんが、今日の試食にと選んでくださったのはごろんと丸い聖護院大根。「皮を厚めに剝いて、サイコロに切っておでんに入れてみてください。とろける様でしっかりしていて、普通の大根と一緒に炊くと一番差が出ます」ダシを吸った聖護院大根はなんともなめらかな口当たりと程よい歯ごたえ。「皮は玉ねぎと合わせてポタージュに使うといいですよ」。

「京野菜はなぜおいしいの」上田さんの答えは「京都にはたくさん人糞があったから」とシンプル。「京都には千年以上前から人がたくさん住んでいて、周りに海がなかったので人糞を山に捨てるしかなかったんです。それで良い土壌が育まれ、エコのサイクルが出来上がっていたんです。」都の食文化と関わりが深い京野菜は厳密にいうと京都市内で作られたものを指すそう。「でも意外とエビ芋は富田林産がおいしいんです。静岡でもいろんないいエビ芋を作っていますよ」「ふふ、お商売を忘れてますよ」と笑う白井。

「冬の九条ねぎは柔らかくて、ねぎと牛肉だけのすき焼きも絶品です。」と上田さん。「京野菜は本来その季節しか出回らないもの。九条ネギ、聖護院大根、エビ芋は冬。夏は賀茂なすやきゅうりと旬の味を楽しみます。お揚げと炊いて一番おいしいのが畑菜。1月2月の初午の時に食べるのは、その頃一番おいしいから。京都でこの日に何を食べると細かく決まっているのは旬を忘れないように。5月5日に筍ごはんって遅いんちゃう?と思われるかも知れませんが、本当の旬はその頃。今はなんでも早く早くなってしまっています。」お盆の精進料理、七草がゆは暑さやお正月のごちそうに疲れた体を野菜で癒す昔ながらの知恵だとも。

「上田さんは京都大学を出られた八百屋さんなんですよね。松茸にずいぶん力を入れられて」「岩手の松茸研究所に協力した後、京都の山を何千人かかって手をいれたりしたんですが1本採れただけ。私たちが薪や炭の生活に戻って、松林でも傘をさして歩けるぐらいの里山を育てないと出ないようです。」スウェーデンやポルトガルまで松茸の調査に行かれることも。「松茸は松茸ごはんが一番いいですね。1本しかなくても大勢の人に食べてもらえるから」「あ、私も賛成!」と意気投合。

無農薬野菜を作りたいと就農する若い人たちの指導もされる上田さん。「ただ無農薬というだけでなく、食べておいしい野菜を作って欲しい」と思いを。八百屋さんの枠を越えて京の食文化や農業を守り伝えることへの意気込みが伝わってきました。


白井からは12月の「きょうの料理」で放送予定の「牛肉のたたき」と「ポテトのサーモン巻き」のご紹介を。試食の聖護院大根に添えたのは白井のおすすめコーナーから山田錦の米麹を使った「白みそ」と「梨醤ソース」、「わさび漬け」でした。

(文:土田)

2017.11.24 株式会社ドンク 執行役員 営業本部長 上澤 祐さん

2017/12/1 New

「日本にフランスの文化を伝えるとともにたくさんの職人を育ててこられた会社です」と白井が紹介したのは株式会社ドンクの営業本部長 上澤祐さん。

「1905年に神戸で創業し、今年で112年。ドンクという名前になったのは1947年、ドン・キホーテ(Don Quixote)の最初の4文字をとったオリジナル名です」。1954年フランス国立製粉学校のレイモン・カルヴェル先生との出会いが大きな転機に。「その時に教わったフランスパンの製法を今も守っています。焼き上げまでを一気に行うためコントロールが難しいのですが、その分焼き上がりのおいしさは格別。ぜひ試食のパンも乾かないうちに召し上がってください」。

東京青山に出店した頃は皮の硬いフランスパンに戸惑う声も聞こえる中、来日フランス人やフランスに住んだ経験のある方の口コミから評判になり、モード雑誌にも取り上げられブームに。
「ドンクのものづくりのルーツはヨーロッパの伝統の技」と言われる上澤さん。クリスマス菓子のシュトーレンやパネトーネなどにも独自のこだわりが。「パネトーネはイタリアの発酵菓子。イタリアの風土に育まれた種は日本では時間が経つとその味わいが再現できなくなります。そこで毎年イタリアに職人が出向き、毎年譲り受けています。30年以上続いています」。地元のパネトーネの見本市で試食を提供した時も大好評でその味に自信を深めたそう。本場の人々を唸らせる伝統菓子もドンクの自慢のひとつ。

「毎年約50名の社員がフランスのヨーロッパの老舗ベーカリーを中心に海外視察や研修を通じて腕を磨きます。様々な環境で職人としてステップアップし、人としても育つ、それが職人自身の励みになっていると思います。」パンのワールドカップと言われるクープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリーでの優勝実績など、世界トップクラスの技を持つ職人が変わらぬドンクの味を支えています。

ドンクの店頭にならぶパンの約3割はお店ごとのオリジナル商品。職人が地域のお客様の好みを考えながら工夫されるそう。「西宮バゲットって普通のとどう違うの?」白井の質問に急遽、西宮阪急の店長向井さんも会場へ。「フランス産の粉を使って前日に仕込み一晩しっかり熟成させていますので中のもちもち感と皮のパリッと感を強く感じていただけます」「これを薄く切って色々のせて食べるとおいしいの!和の惣菜にも合いますよ。パクッと一口で食べられるサイズもいい。」と白井。

「これまでは、ものづくり、人づくりにこだわってきました。これからは商品の楽しみ方をもっとお伝えしたい。」と上澤さん。「ドンクに入社して20年、本当に良かったと思っています。お客様との接点を大切にしていきたい。」と向井さん。会場のお客様にドンクの精神とお二人の誠実な思いがしっかりと伝わった温かなひと時となりました。(文:土田)

2017.11.10 園田女子大学名誉教授 田辺眞人先生

2017/11/16 New

「ずっと来て頂きたかった方です。西宮阪急が無事9周年を迎え10年目に入るこのタイミングでお話を聞けるのが嬉しくて」と白井が紹介したのは園田女子大学名誉教授の田辺眞人先生。白井が大好きなエッセイ「フライブルグのマーチン門」を書かれた奥様のゆかりさんとともに来てくださいました。今回は歴史家の田辺先生に身近な阪神間の歴史や文化について講演会形式でお話を。

「阪神間とは簡単にいうと大阪と神戸の間、尼崎・西宮・芦屋となりますが、神戸は入ると思いますか?神戸が入ると思う人と入らないと思う人はだいたい半々です。でも大阪は入らないでしょ?伊丹・川西・三田も阪神間と称されることから、阪神間という概念は兵庫県のものと考えられるんです。どこから来ましたか?と聞かれて兵庫から来ましたと神戸の人は言いません。芦屋、宝塚もそう。西宮は半分は西宮、半分は甲子園球場の近くからと答えます。あと一つ兵庫からといわない地域はどこでしょう?」答えは丹波篠山だそう。日ごろ気づかず生活している地域の概念にはっと気づかされ、歴史の話題に引き込まれます。「西宮北口を略してニシキタと呼ぶのは大阪風、神戸は本来キタグチと呼んでいました。何気ない言葉にも文化圏の違いが表れます」。

古墳時代の湾岸地方の略図が書かれたレジュメをみて、古代から現代への土地の成り立ちをたどり、風土や人の営みに思いをはせると地名や神社の由来が、一つの糸のように今につながる楽しい時間に。「波が穏やかな瀬戸内の行き止まりが大阪。西風の影響でこの辺りは波が高く速くなる、浪速(なみはや)と呼ばれ、浪花(なにわ)となっていったんです。」西宮・尼崎・芦屋の由来もそれぞれに説明をしてくださり、お客様も「へぇ~」の連続です。

「何気なく見ている町の名前にも歴史とともに意味がある、そんなことに心を寄せてみると新たな発見があったり、旅や暮らしが楽しくなります。それが教養なんですよ。」
歴史の楽しさを存分に味わって、試食を食べるのも忘れるほど。今回の試食はドンクのバケットに東洋ナッツ「パンに塗るアーモンド」と「野菜につけるピスタチオ」のナッツペーストを。「このピスタチオをお酢とマヨネーズで伸ばしてブロッコリーに添えてみました」と白井。紅茶はムレスナティーハウスの「心からありがとうのお茶」。

いろんな角度から地域の歴史を知ることで今住んでいる町への愛着をより深めることができた素敵なひとときとなりました。(文:土田)

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